吉祥寺の春、桜のある風景
年によってばらつきはあるが、3月下旬から4月上旬にかけての吉祥寺は、あちこちで淡いピンクの風景を目にする。吉祥寺およびその周辺には桜の名所が点在しており、気軽に花見を楽しむことができるのだ。
その代表格は、吉祥寺になじみのある人なら、誰もがお気に入りの花見スポットに挙げるであろう「井の頭恩賜公園」、通称「井の頭公園」。
池の周辺には約400本もの桜が咲き誇り、そのほかにも園のあちこちで、春霞にくるまれたような美しい情景が繰り広げられる。その数約600本。種類はソメイヨシノやヤマザクラなど。公園を散策しながら、それぞれの花弁の違いを観察してみるのも一興だ。
井の頭池に浮かぶボートを借り(有料)、水面から眺める桜も格別なもの。池の真ん中までこぎ出て、花びらに取り囲まれるような感覚を楽しむのもよし、あるいは幹の張り出す縁まで近寄り、頭上すぐに桜色の天井を感じるもよし。水辺を有する桜の名所だからこそ味わえる、実に贅沢な鑑賞スタイルだ。
この時期、特に休日あたりにボートに乗ろうとすると、貸し出し待ちの行列ができていることも珍しくない。極上の景色を楽しみたいなら、早めの時間に出かけるのが得策。
井の頭公園で見られる桜の風景の中でも人気が高いのが、七井橋から見る景色。公園のシンボル・井の頭池の縁からせり出すように咲く姿は、満開時には、あたかも錦絵のごとき美しさ。水面まで桜色に染まりそうな情景は、多くの人の心を引きつけるのも納得だ。
多くの人出でにぎわう井の頭公園の花見シーズン。吉祥寺駅周辺は、いわゆるデパ地下や飲食店などが軒を連ねているため、出来合いの弁当やつまみを購入するだけで花見の準備も即座にできる。「花より団子」派にはうれしいところだ。
テイクアウトできるグルメが充実しているので、手ぶらで出かけても大丈夫。この点でも、井の頭公園は、花見スポットとして絶好のロケーションといえる。美味しい食事を頂きながら桜を楽しめば、井の頭公園の花見はさらに盛り上がる。もちろん、ゴミの持ち帰りは絶対条件。花を愛でたら、その美しさを損なうことないよう公園を後にしよう。
そんな井の頭公園の花見には、ちょっとした穴場スポットもある。たとえば、井の頭公園の守り神・弁財天の裏手。池周辺のメジャースペースに比べると、わりあい落ち着いて桜を眺められる。
また、「三鷹の森ジブリ美術館」の近くもおすすめだ。ピンク色のソメイヨシノと、緑の草原とのコントラストが目を引く。井の頭池周辺のにぎやかさとはまた一線を画する花見を味わえる。
また、井の頭公園と同様に、「善福寺公園」も吉祥寺に住む人たちのよい花見スポットになっている。
善福寺公園は、多少駅から離れていることもあり、井の頭公園と比べて、他の地域からの花見客の割合が少ない。そのため、地域色豊かな、のんびりとした花見を楽しむならこちら、という地元の人たちも多いという。
善福寺公園は、園内の桜の本数、およそ200本。主に上の池と下の池周辺を飾っている。たわわに花をつける桜の木が密集し、井の頭公園とは違った落ち着きのある風情を生み出している。
時間があれば、こういった大きな公園で、水や緑に親しみながら花見を楽しみたいものだが、こうした時間がなくても、まちを歩くだけでいくつもの桜の風景に出合えるのが吉祥寺だ。
たとえば、吉祥寺駅近くに位置し、このまちの歴史で強い存在感を放っている月窓寺の桜。
そのほかにも、通勤途中、買い物へ出る際、あるいはいつもの散歩時など、風景に溶け込むさまざまな桜と出合い、気持ち弾むような季節の到来を感じることができるのだ。
桜は、花弁の美しさはもちろん、一瞬にして咲き、またたく間に散りゆくところが最大の魅力といえる。刹那に花開く尊さ、その後いくばくもなく花散らす潔さに感じ入るからこそ、日本人は桜を強く愛するのかもしれない。
そんな“たまゆら”(一瞬の間)の美を、身近に感じられるのがこの季節の吉祥寺。皆が桜を楽しむこの季節は、吉祥寺に住む人が、「吉祥寺に住んで良かった」と実感する季節でもあるといえそうだ。




