街と響きあう、舞台芸術の新しい風を吉祥寺シアターから!

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吉祥寺シアター支配人の箕島裕二さんは、これまで演劇界で数々のキャリアを積んできたことで知られる。現在は神奈川県在住ということだが、中央線沿線に住んでいた経験や、学生時代に東急裏でアルバイトをしていた経験などもお持ちとあって、吉祥寺は以前から“気になる街”だったという。民間からあえて公共劇場を担う仕事に飛び込んだ思いや、武蔵野市立吉祥寺シアター(以下、吉祥寺シアター)の運営を通じて伝えていきたい想いなどを伺ってみた。
まず、吉祥寺シアターのコンセプトからうかがえますか?
吉祥寺シアターは「現代演劇やダンスなど、同時代の舞台芸術」に特化した施設として、以前は「近鉄裏」と言われていた吉祥寺の東部地区に2005年5月、オープンしました。エッジな人々が集まる吉祥寺というエリアが持つ街の魅力と共鳴しながら、街のさらなる魅力を付加する役割を担っています。また、市立の劇場として「市民交流の拡大と深化」「新たな都市文化の発信」「日常的な街の活性化」を目指しています。
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吉祥寺シアターのシンボルマークも「吉祥寺」を示すアルファベットの「K」の文字をデフォルメしたもの。次の動きへと移る躍動感あふれる瞬間がシンボライズされています。これは、吉祥寺シアターそのものが先駆的で影響力ある磁場としての役割を担い、多くの人々を魅了させる可能性を秘めた場であることへの期待が込められているんですよ。
吉祥寺シアターの特徴や魅力は、どういったところにあるとお考えですか?
吉祥寺シアターは最大定員239名という公立ではめずらしい単館小劇場です。小劇場を利用するのは、一般的には主にまだ若い演劇集団で「お客様の動員が少ないから小さい劇場でやろう。そして、名が出たら大きな劇場で上演しよう」というエネルギッシュでエッジが効いた人たちが少なくありません。それを間近に生で観ることができるのは、とてもエキサイティングなことだと思います。そういった意味では、小劇場は吉祥寺という街にピッタリなんじゃないかな。
それに、何と言っても吉祥寺駅から5分というロケーションも魅力のひとつです。演劇やダンスだけ観て、そのまま帰宅するっていう人は演劇などのかなりコアなファンで、ほとんどの人が「演劇を観た後、食事をしよう」とか「ショッピングしてから演劇を見よう」といったスタイルだと思うんです。そういうニーズに対して、吉祥寺という街は、映画館や飲食店なども多数あるため、興業を行うエリアとしての価値も高く、劇場をつくるには理想的な場所だと思います。
そういった数々の吉祥寺の魅力が、箕島さんにシアター立ち上げへの参加を決意させたのでしょうか?
もちろん、それもありますが、昔、父の仕事の関係で2年間三鷹にも住んでいたし、それ以降も中央線沿線を転々としていたんです。それに、学生時代には東急裏の飲食店でアルバイトをしていたこともあって、以前から吉祥寺は“ポテンシャルの高い地域”だと感じていました。でも、自分自身が、一生を通じて公共にかかわる仕事をするなんて夢にも思っていませんでした。そんな時、武蔵野市が吉祥寺シアター立ち上げのため、舞台芸術やエンタテイメント関係の経験者を公募していると聞き、応募してみたんです。
演劇界に長くいても、劇場の立ち上げに関われるチャンスはそれほど頻繁にあることではありません。このチャンスに、自分のこれまでの経験をフルに活かして、演劇をするための“ファクトリーづくり”に携わりたいと考えたのです。それに、駅からこんなに近い場所に新しいシアターができるなんて夢みたいなことだと思いませんか。吉祥寺は、いつも“住んでみたい街”の上位となるエリアです。人気があるだけに、駅のそばに大きい文化施設をつくる土地なんて普通ありません。そんな吉祥寺の駅から5分の場所にシアターをつくることができたのも、ここにはもともと市政センターがあり、場所が移転したからなんです。千載一遇のチャンスでしたね。
箕島さんは吉祥寺シアターに携わってすでに6年目ということですが、シアターをスタートするにあたっての目標などはお持ちだったのでしょうか?
スタート時の5カ年計画として、やや抽象的ですが、私は「吉祥寺シアターを、公の施設というだけでなく“劇場らしく”思ってもらいたい」と考えていました。そのため、シアターが劇場らしい顔つきになるようにしようと。「吉祥寺だ、若いクリエーターが頑張っている」と思ってもらえるようになりたい。さまざまな劇場がある中で、吉祥寺シアターはカジュアルな演劇を提供する場にしたいと考えました。小劇場演劇と言えば、下北沢や新宿が演劇を志す人にとってステイタスであるように、吉祥寺シアターでも話題性のある演劇や最先端のパフォーマンスを提供する劇場として、演劇業界の“格”のようなものをつくっていきたい。さらに歴史を積み重ねていくことで、劇場としてのブランド力を高めていきたいと考えています。
また、市立の施設として、近隣との関係も大事にしていきたいと考えています。「吉祥寺シアターができたから、ゴミが散らかっているようになった」「店に人が来なくなった」とか、言われないような環境づくりもしたい。逆に「吉祥寺シアターができたから、俳優さんが来てくれた」「劇団の人たちが打ち上げやってくれた」「人の流れが多くなった」と言われるようにしていきたいですね。
地域の方たちに向けた活動もされていると伺いましたが。
まずは、市民サービスとしてチケットの割引や優先もありますが、公共施設なので個々のお客様に特別なサービスができない分、演劇をやる人の相談に乗るなど、自分が持っている知識や経験で対応できることは惜しみなく提供しています。また、吉祥寺シアターには稽古場もあるので、演劇・ダンスはもとより、市民団体の合唱や太極拳、子どもたちのリトミックなどにもご利用いただいています。
さらに、地域の方たちが鑑賞するだけでなく、舞台芸術にもっと親しんでいただくために、ワークショップも行っています。そうはいっても押し付けにならないようにするのが、演劇というジャンルの難しいところ。たとえば、美術関係のワークショップであれば、絵を描いたり、陶芸をやったり、一般の人にとって入りやすいし、作品がつくれる充実感を味わってもらうことができますが、演劇はそうはいかない。歌って、踊って、演技するミュージカルを1日でできるようにはできませんからね。ここに舞台芸術のワークショップの難しさがあると考えています。子どものためのワークショップも実施しましたが、現在は試行錯誤中。私自身、子どもの時に日生劇場で観た芝居にとても感動した思い出があるので、小中学生に劇場で上演する“本物の演劇・パフォーマンス”を生で観る機会を提供したいですね。
また、一般の方にも演劇に親しんでいただくためのアプローチとして、ちょっと前に渡辺えり子さんに講演をお願いしたんです。渡辺さん自身、まだ駆け出しの頃、吉祥寺で演劇をされていた経験もお持ちなんです。そういった市民にとって身近な話を取りまぜながら演劇の魅力を語っていただき、大変好評でした。今後もこういったカタチで、演劇に対する一般の方にとっての“敷居の高さ”を一つひとつ段階的に下げていきたいと考えています。
最後に、箕島さんの今後の目標を伺えますか?
武蔵野市の市民は約13万人。それ以上の規模を持つ街でも劇場がないところは少なくありません。また、現在のような不況下では、生活に密着した医療や福祉、教育は削減できませんが、文化的な計画については消極的にならざるを得ない地域も生まれています。そういう時代にあって、市の施設として劇場を保有する武蔵野市の文化水準の高さを実感しています。市民の税金で成り立っている劇場なので、市民の方たちが誇りに思える場でありたい。そのため、他の地域からの来訪者が増加するような文化活動を行い、街を活性化させ、新しい人の流れをつくっていきたいですね。
また、吉祥寺の街は、よくエリアに分けて語られることが多いのですが、南側には井の頭公園があり、憩いのエリアとなっています。そして、北側はサンロードや東急百貨店など、個性的なカフェや雑貨のお店が多数あるエリア。その点、東部地区はまだまだ新しい成長中のエリアです。今後は武蔵野市の文化的なエリアとして位置づけられるよう、吉祥寺シアターの認知度アップを推進していきたいと考えています。
インタビューを終えて
現在、演劇・映画の紹介雑誌に吉祥寺シアターのレギュラー枠をつくってもらうなど、演劇好きや業界の人には認知されてきた手応えを感じているという。実際に取材に伺った際も、自転車を止めて上演内容を確認する方やシアター前のベンチで開場を待つカップル、中には家族連れ、外国人の方たちも目にした。また、吉祥寺シアターの入り口横にあるカフェは、シアターで上演された演劇やパフォーマンスの写真が貼られ、演劇関係のチラシが置かれているため、開場が待ちきれない来館者にとって観劇前のワクワク感を高める空間となっているようだ。舞台がはねた後も出演者の反省会にも利用されたり、観劇を終えた人々が余韻を分かち合う場にもなっている。エネルギッシュな文化の発信地ならではの空間である。
information
武蔵野市立吉祥寺シアター
所在地:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-33-22
電話番号:0422-22-0911
http://www.musashino-culture.or.jp/theatre/





